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日記だとか文学音楽に関してだとか創作物の断片だとかです。
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嗚咽がふいにミーチャの胸奥からほとばしりでた。彼はアリョーシャの手をつかんだ。
「なあ、アリョーシャ、屈辱だよ、今だって屈辱に泣いているのさ。この地上で人間は、恐ろしいほどいろいろなことに堪えていかなけりゃいけないんだ。人間には恐ろしいほどたくさん災厄がふりかかるんだよ! この俺を、コニャックばかり飲んで放蕩の限りをつくしている、将校の肩章をつけたただの下種野郎にすぎない、なんて思わないでくれ。俺はね、ほとんどこのことばかり考えているんだ。この虐げられた人間のことばかり考えているんだよ。ほらを吹いていないかぎりはな。これからは、ほらを吹いたり、空威張りしたりしたくないもんさ。俺がそういう人間のことを考えるのは、つまり自分がそういう人間だからさ。

  卑しい世界から人が
  心で立ち直るためには、
  古き母なる大地と
  とわの契りを結ぶことだ(注:シラーの『エレウシスの祭』)

 ただ問題は、どうやってこの俺が大地ととわの契りを結ぶかってことだよ。俺は大地に接吻もしないし、大地の胸を切り開きもしない。いっそ俺は百姓か牧夫にでもなるべきなんだろうか? 俺はこうして歩みつづけながら、いったい自分が悪臭と恥辱の中に落ち込んだのか、光と喜びの世界に入ったのか、わからない。そこが困るんだな、なにしろこの世のすべては謎だよ! よく、恥さらしな放蕩のいちばん深いどん底にはまりこむようなことがあると(もっとも、俺にはそんなことしか起こらないけど)俺はいつもこのケレースと人間についての詩を読んだものだ。じゃ、この詩が俺を改心させただろうか? とんでもない! なぜって、俺はカラマーゾフだからさ。どうせ奈落に落ちるんなら、いっそまっしぐらに、頭からまっさかさまにとびこむほうがいい、まさにそういう屈辱的な状況で堕落するのこそ本望だ、それをおのれにとっての美と見なすような人間だからなんだ。だから、ほかならぬそうした恥辱の中で、突然俺は賛歌をうたいはじめる。呪われてもかまわない、低俗で卑しくともかまわないが、そんな俺にも神のまとっている衣の裾に接吻させてほしいんだ。一方では同時に悪魔にのこのこついて行くような俺でも、やはり神の子なんだし、神を愛して、それなしにはこの世界が存在も成立もしないような愛を感じているんだよ。

       ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」(原 卓也訳)より

喉が渇いている。器官のひとつひとつが、細胞のひとつひとつが全力で水を求めている。わたしはその声を聞く。ほとんど叫びに近いその声を。
コップに水を満たし、一息に喉へ流し込む。流し込んで、一息つく。それでも、その痛みに似た渇きは一向に癒されることがない。「けれど、何も起こらなかった」ゲームの中のつめたく乾いた表示みたいに。

   ***

汗をかいて目を覚ました。わたしは夢の中で、すでに遠い昔に失われてしまった「あるもの」を無理に手に入れようとしていた。そのためならば、今ある他のものを全て壊してしまってもかまわない。

つるはしを手にわたしは、あらゆるものを壊し続けた。そのうちにわたしは、いったいその破壊行為のその末に、何を手に入れることになるのか、それについてさえ考えなくなっていった。ただ欲しかった。その「あるもの」を手に入れれば、それさえ手に入れさえすれば、そうすればわたしは、その時に止まるだろう時間の中で、幸せになることができる、そう考えた。そう考えて、ひたすらつるはしを振るった。

気づけばつるはしはわたしの手そのものであった。泣き叫ぶ「それ」を排除せよ、わたしの身体がわたしの理性に命令していた。「それ」とは、擬人化された「想像力の欠如」であった。「それ」は想像力の欠如を無感覚さと意味のない言葉で埋めて、他人を傷つけながらあたかも自身が傷ついたような顔をしていた。「それ」を排除せよ、そうすればわたしは「あるもの」を手に入れることができる。そうすれば。わたしは「それ」の喉に手をかけた。

   ***

「それ」とはなんだったのか?

   ***

わからない。

   ***

わたし自身のことだったのかもしれない。

   ***

太宰は「生活すること」の感覚がわからない自身の性質を「人間失格」の中で吐露して死んだ。穂村弘はカルピスを飲み、「もう生きてやらんぞ」と叫んだ。フィリップ・マーロウは、自身にしか聞こえない「鐘の音」を聞きながら、それでもただ生きた。ひたすらハードボイルドに。彼らもこんな風に、夢の中で何かを必死に求めただろうか。
| なつき | 断片 | 19:16 | comments(0) | trackbacks(3) |
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